補助金あるある ~補助金にまつわる思い込みや過度な期待~-前編
2021年8月31日コロナ禍の襲来後、サプライチェーン補助金や事業再構築補助金などの大型補助金が話題になりました。
しかし、補助金はそれぞれ目的があって制度設計されたものですから、何も考えずに自社にそぐわない制度に申請してしまうと時間やお金の無駄になってしまいます。
今回はそんな話も含めた「補助金あるある」をまとめてみました。
必ずもらえる給付金や助成金と混同
まず「補助金」とは何か。
厳密な定義もあり一概には言えないのですが、一般的には「経済産業省系の制度」で行われる事業者への給付を言います。
一方「助成金」は「厚生労働省系の制度」で使われる場合が多いです。
どこの管轄かは重要ではないのですが、ポイントとしては、給付金や助成金は「要件を満たしていればもらえる」お金であるのに対し、補助金は「要件を満たしていれば審査してくれる」性質のもので、必ずもらえる訳ではありません。
国の政策の方向性に合致した事業計画で「この事業にお金を出せば事業者は元気になり国の税収も増える!」と認められたものにのみ補助金は出るのです。
簡単に言うと、他の事業者と競争して勝ち取るという側面を持ち合わせています。
なので、以前書いた「事業再構築補助金の落とし穴」にもあるように、補助金が通らなくてもやる事業こそ申請し、補助金に過度な期待を持たない事が基本中の基本です。
どれだけ素晴らしい計画でも、補助金の狙いや政策意図と合致しなければ通らない時は通らないものです。
採択された補助金額をすぐにもらえると勘違い
一部の例外はありますが、補助金は使った分だけが事後的に給付されます。
例えば、補助額1,000万円、補助率1/2の補助金で1,500万円の設備投資を行う事業計画が採択された場合、採択時にすぐお金がもらえる訳ではありません。
採択後に投資の一部が否認され減額される場合もありますし、実際に投資した額の1/2が事後的に補助されます。例えば採択後に計画が変更され1,200万円しか投資しなかった場合、その1/2である600万円が投資後に補助されます。
その際、「本当にお金を使ったか」について、導入した設備の現物は勿論、領収書や通帳などをチェックされ、かなり厳密に検査されます。
税金を使うので1円の間違いも許されません。
加えて、いわゆる「精算払い」ですので、一旦は先払いの資金負担が発生し、自己資金が無ければ補助金が支払われるまでのつなぎ資金も必要です。
あらかじめ金融機関に声をかけておくのが望ましいでしょう。
採択を待たずにお金を使ってしまう
こちらも例外はありますが、補助金には「事業期間」というものが存在し、その期間内の出費だけが補助される仕組みです。
つまりこれが1日でもズレると採択されたのに補助金が支払われない、という事が起こります。
大体の事業期間は「補助金申請が採択された日」からスタートします。
実際に先走って設備を購入してしまい補助金が支払われなかったというケースは少なくありません。
何故そのような事が起こるのかというと、設備は大型の物になると納入が半年先ということも珍しくないので、先行発注せざる得ない事などが原因のようです。
最近ではそのような事情もあり事業期間が延びた制度もあります。
かならず事業期間を確認の上で計画的にお金を使いましょう。
給付後の管理が意外と面倒
補助金は、採択され、お金を使い、補助金が支払われて終わりではありません。
実はその後に5年間(期間は制度による)の管理期間があります。
これが意外に面倒で、既存の事業とは別に収支をつけなくてはなりません。
事業単位で共通の費用、例えば電気代などを計算できるわけはないのに、数値の報告だけは求められます。
補助金が採択されたら、申請を手伝ってくれた専門家や認定支援機関、もしくは顧問税理士等に協力を求めるなど対策を取りましょう。
(次回に続く)
大阪の中小企業診断士。
㈱リクルートでSUUMO立上げ後2010年に退職・独立。工務店を中心に経営支援を開始し、2011年に中小企業診断士資格取得。
建設業や製造業など「創る」企業が「売る」機能を身につける支援を得意とする。
事業支援の仕事が中心だったがコロナ後に当サイト管理者のHill Andon氏から誘われ金融支援の世界に足を踏み入れ現在に至る。