ビジネスエッセイ:何はともあれまずは5S ~SDGsやDXにもつながる中小企業の経営改善一丁目一番地~-①

ビジネスエッセイ:何はともあれまずは5S ~SDGsやDXにもつながる中小企業の経営改善一丁目一番地~-①

2021年8月8日 オフ 投稿者: Hill Andon

整理・整頓・清掃・清潔・躾。それぞれの頭文字をとった5Sは、日本企業(とりわけモノづくり企業)にとっては馴染みのある言葉でしょう。
シンプルでわかり易くて、いかにも日本の経営文化的な、しかし究めるとなると難しい、そしてちゃんとやれていない企業が結構あるのがこの5Sです。
また5Sはけっこう間口が広く、最近流行りのSDGs(持続可能な開発目標)やDX(デジタルトランスフォーメション)とも相性の良い、というか5SをキチンとやっとけばSDGsもDXもそこそこできちゃう、というのが筆者の意見です。

本稿では基本的な5Sの考え方をおさらいしつつ、SDGsやDXと関連付けた5S論をご紹介したいと思います。

筆者はこれまでいくつかの中小企業の5S活動を指導したり、第三者としてフォローしたりした経験があります。
それを踏まえて言うのですが、同じレベルの企業であれば5Sをちゃんとやっている企業とそうでない企業であれば概ね前者の方が業績(特に収益性/生産性)が良い。また、業績が芳しくない企業の多くは5Sがちゃんとできていない。という印象です。
何が言いたいかというと、「中小企業にとって5Sはキチンとやっておいてまず損することのない、現場の運営改善には必須の取組ですよ」ということです。

まず、そもそも5Sとは?というところから整理していきましょう。
なお本稿の記述内容は、筆者にとっての5Sバイブル、「トコトンやさしい5Sの本」を参考にしています。

5Sの定義

整理・整頓・清掃・清潔・躾。これをもって5Sと言いますが、それぞれの「S」はどんな意味なのでしょうか?

整理

要るモノと要らないモノをはっきり分けて要らないモノを捨てる。流行りコトバで言えば断捨離でしょうか?要るモノも単に残すだけではなく、必要に応じてより良いモノ(効率が良い。環境負荷が低い)に入れ替える、のも整理に含まれると筆者は考えます。リアルに存在するモノの断捨離だけではなく、紙の情報をデータに置きかえるのも整理です。

整頓

要るモノを使いやすいようにきちんと置き、誰でもわかるように明示する。モノの置き場所、情報(紙もデータも)の置き場所を「動線」(取り出し易さ・他の作業の邪魔にならない・職場環境)も考慮して整頓します。

清掃

つねに掃除をし、きれいにする。工場も事務所もバックヤードも。個々のデスクも。キャビネットの中も。パソコンの中も。従業員一人々々のアタマの中も。

清潔

整理・整頓・清掃の3Sを維持する。ややこじつけっぽい気もしますが(笑)、継続は5Sの中でもある意味最も重要です。「持続可能な5S活動」でなければ意味がない、と言っても過言ではありません。

決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける。
工事現場などで「挨拶励行」みたいな標語を目にすることがありますが、コレは狭義の躾。
より広義に、職場のルール、社内のルール、社会のルール、国際ルールをキチンと守る。コンプライアンスですね。

5Sの効用

  • 作業効率の向上;どこに何が置いてあるかが誰でもわかる。余計なモノは置かれていない。
  • 在庫削減;あるはずの在庫がない。ないはずの在庫がある。なんだかわからない在庫がいっぱいある(これが一番多い)。在庫はおカネが寝ている状態。後者2つは資金効率が悪く、原価の把握ができません。前者は下手をすれば犯罪(誰かが在庫の横流しをやっている?)です。
  • 品質向上;5Sによって作業環境が改善し、効率が上がり、結果としてアウトプット(製品やサービス)の品質が向上します。納期短縮も含まれます。
  • 故障ゼロ・事故ゼロ;設備や環境を良好な状態に維持する(清掃・清潔)ことで設備も人間も快適に働けます。
  • 信頼性向上;5Sによってモノやサービスの品質が上がるとともに従業員のコンプライアンス意識も上がり、企業に対する信頼性(ブランドイメージ)も上がります。今の時代、信頼性のアップは売上アップ、利益率のアップとほぼ同義です。

それでは、次回は5Sの各要素について具体的に見ていきましょう。
(次回に続く)