亀田徹のビジネスアイディアライブラリー 宅配ロッカー編-①
2021年7月1日ベンチャー企業の立ち上げを始め数多くの企業の経営に参画し、商品開発や事業開発に携わってきた亀田徹さん。
このシリーズではそんな亀田さんのビジネスアイディアの数々をご紹介します。
全て実践済み!効果検証済み!のビジネスモデルです。
宅配ロッカーでのクリーニング受渡し
この事業アイディアは1993年に考案したものです。このアイディアがどうやって生まれたかをお話ししましょう。
消えた御用聞き
クリーニング屋さんには昔「御用聞き」といって定期的にお客様を訪問し、洗濯物(衣類)を回収するというビジネスモデルがありました。
しかし最近ではお客様の在宅率が低く、いわゆる「空振り」が多くなり、人件費が合わないという理由から次第に姿を消していきました。
取次店ブーム
その後クリーニング業界は「取次店」ブームとなります。
いたるところに出店し、近隣のお客様に衣類をお店に持ってきてもらうというスタイルに変わっていきました。
異業種の酒屋やたばこ屋さんなどが次々にクリーニングの取次店に転業していったのです。
ところがやがて取次店が増えすぎて過当競争/価格競争になってしまいました。
マンションでの宅配ロッカー
一方その頃、都会のマンションでは住民のライフスタイルが変化し、昼間(夜も?)家にいない「不在率」が高くなってきたことから、その対策として不在でも宅配物を無人で預かってくれる宅配ロッカーの設置が広がりつつありました。
宅配ロッカー+クリーニングという足し算
そこで思いついたのが「宅配ロッカー+クリーニング」という足し算です。
宅配ロッカーの横に夜間金庫のようなクリーニングポストを設置します。
住民は汚れた衣類をマイバッグに入れて都合のいい時間にポストへ投入、クリーニング業者は都合のいい時間に回収し、クリーニング後にこれまた都合のいい時間に宅配ロッカーへ仕上がり品を配達します。
住民はまたまた都合のいい時間にロッカーから取り出します。
クリーニング代の決済は口座振替、という事業アイディアです。
これをマンションデベロッパーへ提案したところ思いのほか好評で、またたく間に採用するマンションが広がっていきました。
アイディアのきっかけは24時間営業のクリーニング店がなかったこと。
生活時間の不規則な現代人にとってはこれは不便ですよね。
ところが、あれだけいろんなサービスをやっているコンビニでは、何故かクリーニングの有人受付ができないのです。
これがヒントでした。
ならば、コンビニの店頭の代わりに宅配ロッカーをプラットフォームにして、そこにクリーニング業者が集配すれば良いんじゃないか!?ということでした。
今でこそ「あるよね」という組み合わせですが、当時としてはまさにコロンブスの卵。
「足し算」という発想も「あるある」ですが、問題は何と何を「足す」か?
顧客/住民のライフスタイルの変化に直面していたクリーニング業界とマンションデベロッパー、それぞれにとっての課題が「足す」ことで解決されました。
課題の在りかとそれをどう組み合わせることでソリューションに仕立て上げられるか?
事業アイディア創出の醍醐味はまさにそこにあります。
(次回に続く)
34歳のとき、当時空調機メーカー開発部勤務から独立し、日本で初めての「宅配ロッカーでクリーニング受け渡し」事業でベンチャー企業を立ち上げる。
その後、日本初の様々な事業を立ち上げ、TV、新聞、雑誌などに取り上げられる。
現在は「TKコンサルティング」の代表として各企業の新規事業の立ち上げ、アイデア提供などを行っている。