生かせ高度人材:優秀な留学生を中小企業に呼び込む
2021年5月24日優秀な新卒社員を採用するのは難しいという中小企業の声をよく聞きます。
2021年卒の大卒・大学院卒の就職状況に関する資料 (第37回 ワークス大卒求人倍率調査(2021年卒))によると従業員300人以下の中小企業の大卒・大学院卒に対する求人は382,300人、それに対して希望者数は112,400人で充足率は29.4%、不足数は27万人となっています。
それではこの不足分を補う方法は無いでしょうか?
少し古い資料になりますが文科省が作成した2017年の資料( 「外国人留学生・海外学生の就職支援」外務省 文部科学省 厚生労働省 経済産業省 平成29年12月13日)によると大学・大学院に通う留学生の65% が日本での就職を希望する一方、実際に日本で就職したのは35%となっています。具体的には約24,000人の卒業生に対し就職したのは約8,400人でした。単純計算で行けばおおよそ7,200人の優秀な留学生が希望を叶えられなかったことになります。
このミスマッチングを解消することによって中小企業に優秀な人材を呼び込むことができると思います。
では実際に留学生の採用が進まないのはなぜでしょうか?それは両者の間に以下のギャップがあるためと考えられます。
- 情報:
企業は優秀な留学生に接触するための情報が不足。留学生は企業の採用スケジュール、事業内容そして入社後実際に携わる業務に関する情報が乏しい。 - 日本語:
企業は日本人同様のコミュニケーション力と協調性を外国人社員に期待し、過度に日本語能力を要求してしまう。 - 文化・コミュニケーション:
企業は日本語の使用を含めて“郷に入れば郷に従え”を求めるが、留学生は入社後日本の企業文化への順応に悩んでいる。 - キャリア観:
企業側がメンバーシップ型採用を行い、ジェネラリスト育成を目的とした長期の雇用を望む一方、留学生は入社即専門を活かせる仕事が任せられ、短期間に昇格していくイメージを持っている。
アジア出身の留学生は親、家族の意向が強く、一定のキャリアを積んだ後、帰国しようと考える人も多い。
海外進出やインバウンド対応を目的とした所謂“ブリッジ人材“として採用した場合、環境の変化やPJの頓挫から当該社員の仕事自体がなくなる事も多い。
上記ギャップから中小企業に就職する留学生が増えないばかりか、入社しても双方の信頼関係が作れず、外国人社員が孤立してしまい、退職や帰国に繋がってしまうケースも残念ながら少なくありません。
次回は上記ギャップを解決するための具体的な方法について考えてみたいと思います。
(この稿おわり)
次回はこちらから
1962年生まれ、中央大学商学部卒業
国家資格キャリアコンサルタント
なかさん本舗 代表
オリックス株式会社において約20年間、中華圏の業務に従事、内14年を駐在員として中国・台湾で過ごす。
中国では合弁企業の立ち上げ・マネジメントに加え、当時では珍しい会社の清算までを経験、現地に於いてたった一人で中国側と清算交渉を行い、出資金100%を回収した。
その後、台湾に異動、社長として現地法人3社のマネジメントに携わる。
現地中小企業向けリース事業の他、不良債権投資事業にて実績を上げる。
2018年に国家資格キャリアコンサルタントを取得。
“歌って、踊れて、中国語ができるキャリアコンサルタント”として留学生支援活動を行っている。