書評 分断のアメリカ

書評 分断のアメリカ

2021年3月15日 オフ 投稿者: Hill Andon

☆☆☆ 一読の価値あり

第46代の米国大統領には、すったもんだの末にジョー・バイデン氏が就任。そのプロセスは文字通り世界中の注目を浴び、あわせて米国社会の深刻な分断が露わになりました。
本書は、日経新聞社が派遣した取材班が、2019年11月から大統領選挙が行われた2020年11月までの1年間、米国各地の「分断」の有様を綴ったルポルタージュ集です。

出版社 : 日本経済新聞出版
発売日 : 2020/12/23
単行本 : 336ページ

「コロナ対策でトランプの無能が明らかになった」「彼の政策で中間層は破壊された」
「トランプ支持というだけでお互いに分かり合える」
「トランプは史上最も優れた大統領」
「バイデンはブルーカラー出身で道徳的な人」
「バイデンは社会主義者」「アメリカが社会主義国のようになるのは嫌」
「気候変動を軽視するトランプの姿勢だけは許せない」

地域や世代、人種や民族、ジェンダー、所得や学歴、様々な階層の人々からの、極端ともいえる賛否が入り乱れるモザイク国家;米国。
ルポはそれらの声を丹念に拾い集め、あわせてマクロの統計データを示して「分断」を浮き彫りにします。
幅広い素材を集めた反面、やや総花的で拡散的、一本々々のルポにはいささか踏み込みが浅いところが無いでもないですが、それでも現代アメリカ社会の「今」を日本人の目線で切り取ってみせた本書。一読の価値はあります。
(この稿おわり)