コーチングの市場規模とプレイヤー

コーチングの市場規模とプレイヤー

2022年3月21日 オフ 投稿者: Hill Andon

はじめに

本稿では日本におけるコーチングの市場規模・「市場」の定義・成長性・プレイヤーとその特徴といった内容について筆者なりの見方を示させていただきます。

そもそもコーチングとは?

「コーチング」という言葉自体かなり広義に使われていますが、本稿の文脈の中では「コーチ」と「クライアント」の間で取り結ばれる関係性をベースに「コーチが質問技法を駆使してクライアントの学習や成長、変化を促し、潜在能力を解放して最大限に力を発揮させること目指すコンサルテーションの一形態」と一応定義づけます。

コーチは、ビジネス(経営/意思決定・人材開発・コミュニケーション)や個人生活(人間関係・自己実現)の様々な局面でのクライアントの自己認識や状況把握を助け、主体的に判断し行動することをサポートしていきます。
コーチは何かを「教える」(ティーチング)のではなく、クライアントの主体的な達成を「助ける」のが役割ということです。

コーチングとは何か?については、以下の記事でもう少し掘り下げて書いています。ご興味ある方はこちらをご覧ください。

コーチングとは?

コーチングの市場規模(広義)

コーチング業界大手のコーチ・エィの調べによると、2019年の日本のコーチング市場規模は300億円だそうです。2015年には50億円市場だったとのことですから4年間で6倍に成長。現在(2022年)では
さらに大きくなっていると思われます。

一方米国では、IBIS Worldによると2022年のビジネスコーチングの市場規模は112億ドル≒1.3兆円と見込まれています。ビジネスコーチングだけでこの規模ですから、パーソナルコーチングやライフコーチなど非ビジネス系のコーチングも含めると莫大な市場規模であることが想像できます。

ただ、この「市場規模」の定義ですが、コーチングを「受けたい」個人や法人がコーチに払っているおカネの合計なのか?コーチに「なりたい」人がコーチ養成会社に払っているおカネも含んだものなのか?がはっきりしません。

後述の「コーチング市場のプレイヤーたち」でも触れますが、世の中にはコーチングというサービスをクライアントに提供しているプレイヤーと、コーチになりたい人にそのノウハウやカリキュラム/資格を提供するプレイヤー(養成会社)が存在します。
しかも、その両者はしばしば重複しています。

つまり、

  1. コーチングの対価としてクライアントからコーチに支払われているおカネ
  2. 「コーチ養成講座」の受講者が講座を主催する会社に支払っているおカネ

の少なくとも2種類のおカネの流れが存在し、上述の「市場規模」にはその両方が含まれていると考えられるのです。
このあたりの内訳について正確に開示された情報は、筆者が知る限りは開示されていないと認識しています。

コーチングの市場規模(狭義)

「コーチングの市場規模」を想定する時にどのような定義を期待するか?は、市場規模を知りたい方のニーズによって様々でしょうが、仮に上記の「1.コーチングの対価としてクライアントからコーチに支払われているおカネ」を「コーチング対価の市場規模」として狭義に定義して、その規模を試算してみましょう。

コーチングセッションの料金相場は1回あたり15,000円程度と考えられます。
下は2,000~3,000円から上は100,000円くらい?までかなりばらつきがあるようですが、筆者の実務感覚から言っても15,000円は妥当なところでしょう。

一人のコーチが一日に実施する(上記料金を対価として得れる)コーチングセッションの回数は?

  • 1日に2セッションがいいところ?
  • 週に5日で10セッション?
  • 4週間で月に40セッション?
  • 年間だと480セッション?
  • これに上記の15,000円を掛けると・・・?
  • 720万円が年間のコーチング売上?

そんなに稼働しているコーチはあんまりいないのでは・・・・。(あくまで私見です)

国際コーチ協会(ICF)の2016年の調査では、同協会の認定コーチがアジアだけで3,700人ほどいるそうです。そのうち何割が日本人かは不明。
また、後述していますが、コーチング大手3社に登録しているコーチ(筆者も一応その一人)は、800名あまり。
コーチング養成講座の修了者の数はその数倍(数十倍?)はいるでしょうが、日本で対価を得て実稼働しているコーチの数はまぁいいとこ1,000人内外でしょうか。(企業内コーチングを行なっているコーチ資格保有者は除いて考えています)

となると、720万円 ✖ 1,000人 = 72億円 が狭義のコーチング市場規模?
いやぁ、そこまではないでしょうね。掛け目50%で36億円。
それでも甘いな・・・。

ということは・・・。
広義のコーチング市場規模300億円の大半は「コーチング養成講座」の受講料ということか・・・。
数十万円~100万円超といった各社の受講料の価格帯からみてもそうかも知れませんね。

コーチング市場のプレイヤーたち(コーチングサービスの供給会社)

一方、コーチング市場のプレイヤーにはどんな人たちがいるのでしょうか?
まずはコーチングを受けたい個人や法人にコーチを供給している会社(や個人)。
コーチング業界の大手といえば、先述した株式会社コーチ・エィ株式会社ウエイクアップ CTIジャパン、株式会社アンテレクトが運営する銀座コーチングスクール(筆者はここで認定資格を取りました)などが挙げられます。
いずれも年商など定量的に事業規模を示す数値は開示されておらず、また、コーチの養成事業とコーチの派遣事業を併営(他の業務も)しているため、「コーチングサービスの供給事業の規模」については、具体的な情報が見当たりません。
ただ、コーチ・エィのウェブサイトでは100名の所属コーチの方々の名前が掲載されていますし、CTIジャパンでは244名、銀座コーチングスクールでは459名のコーチの方々の登録が確認できます。
コーチが所属したり登録しているコーチングファームや団体は他にもいくつもあり、また独自に活動されている個人コーチの方々も多数いらっしゃる(筆者もその一人)ので、それらがコーチングの供給元と言って良いでしょう。
参考までに会員登録などを必要とせずにコーチ検索ができるURLをいくつか集めてみました。

銀座コーチングスクールhttps://www.ginza-coach.com/coaches/list.cgi
コーチ・エィhttps://www.coacha.com/coach/
CTIジャパンhttps://www.thecoaches.co.jp/cgi-bin/coach_profile/coach_profile_index.cgi
myPeconhttps://mypecon.com/coach/
ZaPASShttps://zapass.co/coach/
GOAL-Bhttps://goal-b.co.jp/coaching/private/
日本コーチ連盟https://www.coachfederation.jp/learn/personal_coach/
Coaching Searchhttps://coaching-search.jp/coach/

コーチング市場のプレイヤーたち(コーチ養成カリキュラム等の供給会社)

大手コーチング会社の多くは、登録コーチの派遣(コーチングサービスの供給)業務と共にコーチ養成講座やスクールなどを運営しています。
前の項でも触れたように、市場規模としてはこちらの方が大きいことが推測され、コーチング会社の収益源はむしろこちらの方なのかもしれません。
参考までに各社のコーチ養成カリキュラムのWebサイトをご紹介します。

銀座コーチングスクールスクール概要
コーチ・エイコーチ・エイ アカデミア
CTIジャパンコーチング
日本コーチ連盟コーチングを学びたい方のために
トラストコーチング資格取得
THE COACH Academy  コース一覧

おわりに

コーチの資格自体は国家資格のようなものではなく、いわば誰でもコーチになれる、コーチを自称することができるので、業界を網羅的に管轄している機関やシステムは見当たらず、市場の構造や実態を把握するのはなかなか難しいのが実状といえます。
(この稿おわり)

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カテゴリー:コーチング