ビジネスコーチのショートエッセイ;気分は昼行燈(ひるあんどん)-㉔
2022年3月31日人間の集団について ~司馬遼太郎の著作から~
司馬遼太郎さんの著書に「人間の集団について」という1冊があります。
司馬さんの著作の中ではマイナーな部類。地味な本です。
1973年にベトナムを訪れた時のもの。
既に米軍は当地を去っていますが、戦争自体は続いており、サイゴン陥落は1975年まで待たねばなりません。
今回はそこからの引用です。
「世界政略の虚構」というチャプターから。
国家が自己肥大して世界政略を持つときに、その惨禍はおおいがたいものになる。たとえば日本は(中略)ヒトラーの世界政略に幻惑され、(中略)やがて自己肥大し、大東亜共栄圏という世界政策を持った。それがいかにすさまじい虚構であったかということは、いまは骨身にこたえて知っている。
「自己肥大」「世界政略/政策」といったコトバの厳密な定義は示されていませんが、「日本」という国名や「ヒトラー」という固有名詞を現代のそれらに置き換えても文脈は十分に成り立ちます。
もしかれ(ヒトラー)があの世界一の機甲軍と航空軍をもたなかったならば、人はかれを単なる妄想者かホラフキとしてしか見なかったにちがいない。だからかれはそれらを使って近隣を蹂躙する必要があった。蹂躙したときにはじめてかれ自身が自分の思想がホラではなかったということを確認し、安堵し、世界政略のもちぬし特有の焦燥からまぬがれ得るのである。
権力者が自分の思想が「ホラ」ではないことを証明するために他国を「蹂躙する」。
司馬さん風に表現すると「蹂躙された方はいいツラの皮である」。
まだ蹂躙するには至っていなくても、その恐れのある人物が世界中で増えてきているように思います。
半島の独裁者や超大国の前大統領とか。
そういう人物をトップに戴くと他所の人々はもちろん、巡り巡って自分たちにも災厄が降りかかります。
せめて私たちにできることといえば、そういう人物をリーダーとして選ばないこと。権力を持たせないこと。ですよね。
今起こっていることは遠い世界の出来事ではなく、海峡の向こうから、もしくは頼りにしているはずの隣人発で、私たちにも降りかかってくるかもしれません。
また、私たちの国を起点としてそうした災厄をまき散らしてしまうかもしれない。
まだ1世紀にも満たない過去に、私たちはそういうリーダーを選び、そういう過ちを犯した「実績」があることを忘れてはならないと思います。
(この稿おわり)
こんにちはHill Andonです。日本語で書くと昼行燈と申します。
サイトオーナー兼管理人兼編集長兼メインライターです。
中小企業のみなさん向けに、エグゼクティブコーチング・経営改善支援・補助金申請支援などを行なっている、フリーランスの経営コンサルタント。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関」でもあります。
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