実践ルポ:NLPコーチング「アップタイム」エクササイズに実際に取り組んでみた
2021年11月28日コーチングメソッドの「流派」の一つに「NLPコーチング」があります。
NLP (Neuro-Linguistic Programming)=神経言語プログラミングと呼ばれる枠組みをコーチングに応用したものです。
アウェイクニング
そのNLPコーチングメソッドの中に「アウェイクニング」(覚醒)という概念があります。
「NLPコーチング ~人を覚醒に導く史上最強の心理アプローチ~」(ロバート・ディルツ著)においては、「アウェイクニングが起こると、自分が何者なのか、世の中で何が可能なのかを表すメンタルマップが拡大し、それまで制限であると思っていたものを完全に異なる新しい見方で捉えるようになります。(中略)その結果として、仕事でもプライベートでも重要な転機がもたらされるのです。」とされています。
そして、リーダーやコンサルタント、コーチは「いろいろな意味で『アウェイクナー(覚醒者)』です」と。
おお、素晴らしい。
筆者は必ずしもNLPの信奉者ではありませんが、このアウェイクニングという概念/状態にはあこがれを感じます。
その領域にたどり着ければいいよなぁ、と。
アップタイム
そして「アウェイクニングを導くための強力なリソース」として「アップタイム」があげられています。(前掲書)
本稿はこの「アップタイム」に筆者自らトライしてみた、というお話しです。
アップタイムとは「外部にすべての感覚チャンネルを合わせた」状態、だそうです。(以下、引用は全て前掲書に依ります)
この状態になると「内的対話も想像も精神的緊張もなくなり、その人の感覚的な気づきの焦点が『今、この場』の外的環境に合わせられています」。
「今、この場」に感覚の焦点を合わせる・・・。禅やマインドフルネスでも目にするフレーズですね。
アップタイム状態は、アウェイクニング(覚醒)のカギとなる「意識と無意識のリンク」を行なう状態だとか。
創造的なパフォーマンスは意識と無意識の領域の相互関係/作用の中から生まれてくる。とも。
そういえば思い当たるフシもないではないですね。
スポーツでも芸術でも素晴らしいパフォーマンスが生み出されるときというのは必ずしも意識的に「こうしよう」と考
える前に体や手先が動いている、というケースが多いですよね。
アップタイム状態がこのような状態につながるのであれば、それは素晴らしいことですよね。
アップタイムエクササイズ
さて、この「アップタイム状態」に自らを持っていくためのエクササイズが前掲書に紹介されています。
- 自分の周囲にある様々なものの色や動きなどに目を向け、全景を捉えたり詳細な部分に焦点を合わせたりする。
- 周囲の空気の温度、物体の肌触りや形を感じ、座ったり動いたりする時の筋肉や肌の感じを捉える。
- 様々な音のトーンの違い、どこから音が発せられているかを聞く。声が聞こえるならその音調やテンポ、呼吸の変化にも耳を傾ける。
- 匂いを嗅ぎ、匂いの強さや弱さを感じる。
といったところ。
具体的には
- 中心視覚ではなく周辺視野を使う
- 内的対話ではなく外的な音に焦点を当てる
- 心身ともにリラックスした状態
での10分間ウォーキングです。
やってみました
薄曇りの秋の昼下がり。
近くの川沿いを歩いてみました。
歩いている間、何が目に飛び込んでくるか?何に注意が向くか・・・?
桜並木の紅葉はまだ始まったばかり。ほとんどが緑。少し黄色が混じってます。
いつもなら紅葉から様々な連想が湧いて「今年もあと3ヶ月足らずだなぁ・・・。早いなぁ。年末まで忙しいんだろうなぁ・・・」などと「内的対話」が始まってしまうのですが、「イヤイヤイヤ・・・」とそれを振り払って「外界」に注意を向けます。
散歩している高齢者。川面を飛んでいく鳥。カラスの声・・・。
目や耳に入ってくる一つひとつのモノゴトに注意を継続させず、歩くスピードに合わせて変わっていく外界の風景にどんどん意識を移していきます。
集中しない。
逆ですね。いつもと。
「集中しなさい」「集中力ねぇな、オマエは」「みんな、集中しようぜ!」
私たちの日常生活では常に何かに意識を「集中」することが求められています。
それによってより良いパフォーマンスにつながる(ハズだ)と。
ところがこのエクササイズはその逆です。
五感を働かせて、いろんなモノに注意を拡散させて。
「集中しない」「注意を継続しない」
と自分に言い聞かせる「内的対話」も振り払って。
う~ん。ムズカシイ。
やがて後頭部の中あたりが次第にほんわか暖かくなってきたような気がします。
ちょっとした興奮状態?
脳の表面に血液が集まっているようなフシギな感覚が生じてきます。
けっこう疲れる・・・・。
あぁそうか・・・。
このエクササイズは、禅や武道でしばしば言われる「(意識や体を)居つかせない」に通じるのかな?
意識を外に向けることで心の「中」を空っぽにできるのか?
フト気がつくと、いつの間にかいろんなコトを考え始めていて。
お~やばいやばい!「内的対話」が始まってるじゃん!!
向こうからスタイルの良い女性がジョギングしてきました。
ダメだってば。意識が居ついちゃってるじゃん!と苦笑。
気づき
何分続いたでしょう。
脳がヘトヘトになってる気がします。
ことほど左様にこのエクササイズは難しい。
アウェイクニング(覚醒)はおろか「アップタイム」にも程遠い状態でした。
とはいえ、気づいたことも少なからずありました。
ジョギングなどをやっていると稀に訪れる「ランナーズハイ」はこのアップタイム状態につながるのではないか?
サッカーなどで、ボールの位置、相手の位置、味方の位置、瞬時に変わる状況に反応してプレーしている「集中した状態」は実はひと時も注意を「居つかせない」アップタイム状態に近いのではないか?
「今、この瞬間」に集中し、意識と無意識を相互に作用させる。
ハイパフォーマンスを生み出すメンタル状態にこのようなエクササイズで近づけるのであれば・・・。
またやってみても良いかな。
そんな風に感じた「アップタイム」エクササイズでした。
(この稿終わり)
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書評:NLPコーチング ~人を覚醒に導く史上最強の心理アプローチ~
こんにちはHill Andonです。日本語で書くと昼行燈と申します。
サイトオーナー兼管理人兼編集長兼メインライターです。
中小企業のみなさん向けに、エグゼクティブコーチング・経営改善支援・補助金申請支援などを行なっている、フリーランスの経営コンサルタント。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関」でもあります。
よろしくお願いします。